スプレーガンの詰まりを防止する7つのコツ
塗料や接着剤をスプレーする場合に悩まされる、詰まりの問題。スプレーガンが詰まるたびにラインが止まってしまっては、生産に支障をきたします。このコラムでは、そんな詰まりの問題を改善する7つのコツをご紹介します(本コラムは固定式の自動スプレーガンを想定していますが、ハンドガンにも応用できます)。
スプレーガンが詰まる原因は?
そもそもスプレーガンの詰まりとは、どのような現象なのでしょうか?ご存知のように、スプレーガンはコンプレッサーエアと液を混ぜて霧状にする機器です。液体とエアは別々に送られ、ガン先端で混ざり霧化されます。液体が固まってこの液通路またはエア通路をふさぎ、正常にスプレーできなくなる状態、それが詰まりです。
ほとんどの詰まりは、スプレーガンの先端部で起きます。なぜなら、液とエアの通路が最も狭い箇所だからです。特に、霧化エアはエアキャップと液ノズルの隙間を抜けて出ますが、その幅はわずかコンマ数ミリ〜1ミリ程度しかありません。固まった塗料や接着剤がこの隙間をふさぐと、液体はきれいに霧化されなくなり詰まります。
液体(特に塗料や接着剤)にとって、液吐出口は初めてエアに触れ硬化が始まる箇所でもあります。通路が狭い上、液が固まり始めるため、詰まりは圧倒的に先端で発生するのです。
詰まりの3パターン
もう少し詳しくみていきましょう。液体がエアキャップに付着して固まるパターンは3つに大別できます。
一つはスプレーし始めた当初から液体が固まってしまうパターンです。塊となった液は、圧縮空気を吹きかけられても前方に飛んでいかず、そのままエアキャップに貼り付いてしまいます。これは、エアが弱すぎてそもそも霧化できていなかったり、液体がエアに触れるとすぐに固まってしまう性質であったりすることが原因です。
2つ目はスプレーの勢いが強すぎて、舞い上がってエアキャップに付着するパターン。いわゆる飛散です。細かい塗料粒子がうっすらとキャップに堆積し、次第に霧化エア通路をふさいでいきます。
そしてもう一つ、気づきにくい液体の付着がスプレー停止時に発生します。スプレーガンを何度かオンオフさせた後、エアキャップをよく観察すると、液の吐出口がうっすらと濡れているのがわかります。これはスプレーガンの構造に起因する現象です。
固定式の自動スプレーガンでは、圧縮空気を内蔵バルブの開閉(液のオンオフ)と霧化の2つの用途に使います。電磁弁を閉めると霧化エアは同じ瞬間に止まりますが、液体はコンマ数秒後にバルブがばねの力で戻って止まります(スプレーガンの構造については、「操作ガイド」の「接続方法」「基本構造」もご参照ください)。液はまだ出ているのに、霧化エアだけ一瞬早く止まってしまう。これにより、飛び立てなかった液滴がノズル先端部に取り残されるのです。
意外とカンタン!詰まり改善の7つのコツ
では、どのようにすれば詰まりを防止できるでしょうか?以下に7つの方法をご紹介します。
エアキャップを拭く
機種を変更する
時差噴霧
スプレー停止時、ガンの先端を洗浄液に浸ける
吹付距離や角度を調整する
液経路を見直す
液供給時に異物が入らないようにする
エアキャップを拭く
単純ですが効果のある方法です。ウエスにシンナーや洗浄液を付け、エアキャップと液吐出口を手で拭きます。自動化ラインの場合、ライン稼働中は拭くことができないかもしれません。しかし、昼休みなどの休憩中に拭くだけでも、改善が見込めます。スプレーを止めているときにこそ、液体の硬化がもっとも進むからです。
また、エアシリンダのロッド部にブラシなどを取り付ければ、ブラシがエアキャップをこすって掃除する自動装置を作ることも可能です(ブラシは毛のやわらかいものをご使用ください)。
機種を変更する(ノズル口径、丸吹、らせんタイプ)
ノズル口径や機種を最適なものに変更することで、詰まりの改善が期待できます。ノズル口径とは、液ノズル先端の出口径を指します。口径が大きいほど液が流れやすくなり、詰まりません。またスプレーパターンには大きく分けて丸吹と平吹(楕円形)がありますが、丸吹の方が詰まりにくいです(平吹用エアキャップは丸吹用よりも多くのエア穴があるため、詰まりのリスクが高くなります)。
さらに、丸吹タイプにはらせん状の気流を作って霧化する機種があります(ルミナ自動スプレーガンの場合、ST-6RWやMS-8Bなど)。これらの機種は液体を外に引き出す力が強く、詰まりに強い傾向があります。
時差噴霧
上で説明した、詰まりの3つ目のパターンへの対策です。液のオンオフ用エア(ピストン作動エア。以下、CYLとする)と霧化エアの止めるタイミングに、わずかな時間差を付けてスプレーします。エア入口2個以上の機種であることが必要です。
電磁弁を閉めると、霧化エアだけ一瞬早く止まるため、液が残ってしまう。これを解消するには、CYL用エアと霧化エアの経路それぞれに電磁弁を付け、CYL用エアを切ってコンマ数秒後に霧化エアを切るようにします。こうすることで、液ノズル先端の液の大半を吹き飛ばすことができます。
スプレー停止時、エアキャップを洗浄液に浸ける
エアに触れると特に固まりやすい塗料や接着剤の場合、スプレー停止時にエアキャップの先端だけを洗浄液に浸けます。こうすることで、液体の硬化が進むのを防げますし、エアキャップに付着した汚れを溶かして、ある程度除去してくれます。スプレー再開時には、空吹きを行って洗浄液を飛ばします。
吹付距離や角度を調整する
対象物までの距離や角度は最適化されていますか?どれくらいの距離が最適であるかは、目的や諸条件により変わります。ですが、たとえば吹付距離50ミリ、霧化エア圧力0.2MPaの条件で低粘度の液体をスプレーすれば、エアキャップははね返りですぐに汚れます。
その場合、距離を少し離す、正面からではなく角度を付けてスプレーする、霧化エア圧力を下げてソフトに吹くなどの方法が、エアキャップへのはね返りを減らすかもしれません。
液経路を見直す
スプレーガン先端部以外で気をつけるべきは、液の供給経路(タンクからホースを通ってスプレーガンまで至る、液の通り道)です。液体が高粘度で液経路も長い場合、液がスプレーガンまで供給されず、途中で止まってしまうことがあります。その場合、ホースを太くすることが有効です。
また複数のスプレーガンに液体を供給する場合、液ホースを分岐させますが、分岐の数が増えすぎると供給は不安定になります。液量がバラついたり、液が一部のスプレーガンに届かない事態が起こりえます。1台のタンクから供給するスプレーガンは最大で4台程度が目安です。それ以上の台数に供給する場合は、タンクの数を増やした方が安定します。
液供給時に異物が入らないようにする
液用タンクに異物が入っていると、それが液通路の途中で詰まり、正常にスプレーできなくなります。液の補充時にゴミの混入が起こりうるほか、長い間タンクを洗浄しないと、底にヘドロ状の物質が沈殿していることもあります。定期的な洗浄が詰まりのリスクを減らします。
このほか、たとえば固体潤滑剤や黒鉛入り離型剤、メタリック塗料など、粉末を含む液体の場合、最適な機種が変わることがあります。お客様の使用条件によって、さまざまな改善方法が考えられます。詰まりにお悩みの方は「お問合せ」ページよりお気軽にご相談ください。
そして、安定的な運用の大前提となるのは、何よりもスプレーガンの定期的な洗浄です。ルミナ自動スプレーガンのメンテナンスマニュアルをご希望の方は、カタログダウンロードのページよりご利用ください 。